相続の概要

「相続で損しない!不動産・現金・預金の正しい分け方と評価方法を徹底解説」

相続不動産の実務と最新動向──法改正を踏まえた全体設計の重要性

相続は、単なる財産の受け継ぎではありません。特に不動産が絡む場合、法律的な手続き、税務面、将来の売却や管理までを見据えた「全体設計」が不可欠です。近年の改正民法や相続登記義務化を踏まえ、実務上押さえておくべきポイントを整理します。

 

1. 相続人の確定と法定相続分 まず、相続人の特定が不可欠です。相続人は、基本的に配偶者、子、親、兄弟姉妹などで構成されます。 法定相続分は法律により定められており、例えば配偶者と子が相続人の場合は、配偶者が全体の1/2、子は残りの1/2を均等に分けます。 ただし、相続人の間で財産の分割を柔軟に調整することも可能であり、その場合には後述の「遺産分割協議」が鍵となります。

 

2. 遺言の有無と種類

遺言がある場合、原則としてその内容に従って相続が行われます。 遺言がない場合は、前述の法定相続分に従った分配となります。 遺言には以下の主要な形式があります。

自筆証書遺言:本人が全文、日付、署名を自筆で書く必要がある。

公正証書遺言:公証人役場で作成される遺言。法的な安全性が高く、偽造や紛失のリスクが低い。

秘密証書遺言:内容は秘密にしたまま、作成を公証人に証明してもらう形式。

それぞれの形式には法的要件が厳格で、形式を欠くと無効になる場合があります。遺言の作成は単なる意思表示ではなく、専門家によるチェックが望ましい領域です。

 

3. 相続登記の義務化と不動産管理

2021年4月1日施行の改正民法により、相続登記が義務化されました。相続発生から3年以内に、相続人は不動産の名義変更を行う必要があります。 背景には、未登記の不動産が共有状態で何代も相続されることで、全員の合意が得られず空家化やトラブルを招くケースの増加があります。

罰則:登記を怠ると過料10万円が科される可能性があります。

実務メリット:早期に登記を行うことで、法的トラブルを避け、管理や売却もスムーズになります。 登記手続きの流れは以下の通りです。

相続人の確定:遺言書や戸籍謄本を基に誰が相続人かを特定。

遺産分割協議:全相続人で分割方法を協議し、合意形成。

必要書類の準備:戸籍謄本、遺産分割協議書、不動産登記簿謄本など。

登記申請:法務局に書類を提出して名義変更。

 

4. 税務面の留意点

相続不動産を一人に相続登記して売却する場合、贈与税や譲渡所得税が絡む可能性があります。

贈与税:共有者間で不公平な分配をした場合、贈与とみなされるリスク。

譲渡所得税:売却時の取得価格の計算や課税額に影響。 そのため、登記だけでなく、税務面も含めた「全体設計」が必要です。具体的には、遺産分割協議書を作成し、財産移転の履歴を明確に残すことが賢明です。

 

5. 不動産市場・空家問題との関係

これまで、未登記の不動産が世代を超えて共有されると、意思決定が難しくなり、空家化が進むケースが多くありました。相続登記義務化によって、このリスクを大幅に軽減できると期待されています。弊社にも、相続不動産の売却相談が増えており、登記手続きや税務を含めた全体設計が重要であることを痛感します。

 

まとめ 相続不動産の管理・売却では、単なる名義変更にとどまらず、法的手続き、税務、売却戦略を総合的に検討することが不可欠です。 特に、2021年改正民法による相続登記義務化は、将来のトラブル回避と不動産活用に直結します。

 

ポイント

相続人の確定と法定相続分の理解

遺言の形式と効力の確認

相続登記義務の遵守

遺産分割協議書で履歴を明確化

税務面の全体設計を忘れない

「相続が発生したらすぐに動く」──これが、円滑な不動産管理と売却の第一歩です。

2025年08月23日