「神戸・三田の空き家対策|地域密着のぱんだhouseが教える解決ステップ」
空き家を相続したあとに売るなら、避けて通れないのが「相続空き家の3,000万円特別控除」(正式名:被相続人の居住用家屋等に係る譲渡所得の特別控除の特例)。制度の骨格・最新改正点・実務の落とし穴まで、がっつり一気に整理します。
1. まず「何ができる制度」か(超要約) 相続した空き家(またはその敷地)を、相続開始から「3年を経過する日の属する年の12月31日」までに売却し、一定の要件を満たすと、譲渡益から最大3,000万円を控除できます。対象期間は令和9年(2027年)12月31日まで延長済み。区分所有(マンション等)は対象外です。譲渡価額は1億円以下が条件。賃貸・事業・居住の用途に使ってしまうとNGです。
2. 2024年以降の「重要なアップデート」 相続人が3人以上のとき:控除上限は2,000万円に縮小(以前は一律3,000万円)。令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡から適用。 売買後の対応がOKに:契約時点で未解体・未耐震でも、譲渡した年の翌年2月15日までに取り壊し又は耐震化すれば適用可に(その間に住居・事業・賃貸として使うのは不可)。実務の柔軟性が飛躍的に増しました。
3. 「使えるパターン」3通り 取り壊して更地で売る(従来どおり) 耐震化(新耐震適合)した家付きで売る(建築証明が必要) 建物付きで売るが、翌年2/15までに解体or耐震化(2024年改正で追加) いずれも、売却対価が1億円以下、譲渡先が親族等の特別関係者でないことなどが条件です。
4. 要件をもう少し丁寧に 家屋要件:昭和56年5月31日以前に建築された一戸建(区分所有は除外)。 被相続人の居住要件:相続の開始直前に被相続人が一人で住んでいた家(例外あり)。介護施設入居中でも、家財を運び出し他人に貸していない等なら対象になり得ます。 時期要件:相続開始から「3年経過日の属する年の12/31」までに譲渡。 価格要件:譲渡対価は1億円以下(共有者が別々に売る場合等は合計で判定するのが実務運用)。 用途制限:相続(又は取り壊し)から譲渡まで、居住・事業・賃貸として使わないこと。解体後に月極駐車場にするとNGです。 譲渡先制限:配偶者などの特別関係者への売却は不可。
5. 併用NGと“よくある勘違い” 「自宅の3,000万円特別控除」や「10年超軽減税率」「買換え特例」など他の譲渡特例と重複適用不可。相続税の取得費加算の特例とも原則併用できません。どちらが有利かは比較試算が肝心。
6. 申告と必要書類(超実務) 確定申告が必須。 市区町村発行の「被相続人居住用家屋等確認書」を添付(建築年、被相続人の居住状況、空き家の状態等を役所に確認してもらう)。他に、耐震基準適合証明書や解体証明、相続関係書類など。発行手続きは自治体で若干異なります。
7. 数字でつかむ:シンプル試算(長期譲渡想定) 税率の目安(長期):20.315%(所得税15.315%+住民税5%)。短期は39.63%。※復興特別所得税含む。
例1:相続人2名/売却1,500万円/経費100万円/取得費不明 概算取得費=売却価額×5%=75万円(一般ルール) 譲渡益=1,500 − (100 + 75)=1,325万円 特別控除3,000万円 → 課税対象0円(税額0円)
例2:相続人4名(控除上限2,000万円)/売却5,500万円/経費250万円/取得費500万円 譲渡益=5,500 − (250 + 500)=4,750万円 控除上限2,000万円 → 課税対象2,750万円 長期税額目安=2,750万円 × 20.315% ≒ 約559万円
例3:共有者がそれぞれ売却、合計で1億円を超える たとえば各6,000万円で別々に売る(合計1億2,000万円)⇒特例は使えない。※合計判定の実務運用に注意。
8. つまずきポイント(やりがちなNG) 売却までにうっかり賃貸・駐車場利用(用途NGで特例失効)。 マンション相続(区分所有は対象外)。 譲渡価額が1億円超(共有で分けて売っても合算で判定され、超えると不可)。 親族等への売却(特別関係者は不可)。 申告書類の準備遅れ(確認書や耐震証明は取得に時間。計画的に)
9. スケジュール設計のコツ(実務の“型”) 相続発生→相続人・不動産の要件を即チェック(建築年・単独居住・用途履歴) 適用期限を逆算(「3年経過日の属する年末」まで)。測量・残置物・解体手配は早めに。 国税庁 売り方の選択: - 更地売り(解体費は売却経費になり得るケース多い) - 耐震化売り(適合証明の手当て) - 契約先行→翌年2/15までに解体or耐震(2024年改正)。 市区町村の確認書を並行申請。自治体サイトの案内に従う(添付書類が多い)。 確定申告(他特例との比較は税理士に早期相談)
10. 施設入居中だったケースの救済 被相続人が相続開始前に老人ホーム等へ入所していた場合でも、荷物の持ち出しや賃貸等がなく、もともと一人で居住していた等の条件を満たせば対象になり得ます。単独居住の厳格要件が緩和された経緯があり、該当性は国税庁の解説に沿って個別確認を。
11. まとめ(実務アクション) まずは「建築年」「用途履歴」「売却期日」の3点を最速で確認。 2024年改正で「契約→翌年2/15までの解体・耐震」ルートが実務で強力に。 相続人3人以上なら控除は2,000万円まで。1億円判定は合計で見る実務に注意。 確認書の手配と確定申告の書類設計は前倒し。 他特例との併用不可なので比較試算が肝心(早めに税理士へ)。 制度の“型”を押さえておけば、手戻りも税負担も大きく減らせます。売却戦略・解体や耐震の段取り・書類の揃え方まで、一連の設計を前倒しで進めましょう。