自宅を子どもに贈与するべきか?メリット・デメリットを専門家視点で徹底解説|相続と節税のポイント
親が元気なうちに 「自宅を子どもに贈与したほうが良いのか」 という相談は年々増えています。 背景には、 認知症リスクの増加 相続トラブルの予防 相続税対策 などがあり、早めの対策を検討する家庭が多いからです。 しかし、自宅の贈与はメリットだけでなく大きなデメリットも存在します。 十分に仕組みを理解せずに行うと、逆に税負担が増えたり、将来の売却が難しくなることもあります。 ここでは、親族贈与に詳しい「ぱんだはうす」の視点で、 自宅を子どもに贈与するメリット・デメリットを徹底的に解説します。
1|自宅を子どもに贈与するメリット ① 認知症リスクに備えられる(売却・リフォームができなくなる前に) 親が認知症になると、 不動産の売却・贈与・抵当権設定などの法律行為ができなくなります。 家庭裁判所で「成年後見制度」を利用することになりますが、 子どもであっても自由に売却できない 財産管理は後見人が担当 手続きが複雑で時間がかかる などの制約が生じます。 元気なうちに贈与しておけば、将来の柔軟な売却・運用が可能です。 ② 相続の争いを防げる(不動産は分けにくい) 自宅は価値が大きく、相続の争いの原因になりやすい資産です。 事前に子どもへ贈与しておくことで、 遺産分割でもめない 相続手続きがスムーズ 誰が住むかの争いを回避 といった効果があります。 一物一権を事前に確定させることは、相続トラブルを防ぐ最も強力な方法の一つです。 ③ 小規模宅地等の特例を意識した住み替え計画が立てやすい 自宅を早めに子どもに贈与し、 親自身が住み替える場合、 相続時の「小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)」を踏まえた資産計画が立てやすくなります。 ただし、贈与後に親がそのまま住むと課税リスクがあるため、専門家の設計が必須です。 ④ 配偶者居住権との併用を考えた資産戦略が可能 近年は「配偶者居住権」を活用した遺産分割が増えています。 自宅を事前に贈与しておくことで、 配偶者居住権を設定した資産計画 リバースモーゲージなど老後資金確保の手段 配偶者の住まいの確保 など、相続+老後の二重対策がしやすくなります。 ⑤ 相続開始後の登記義務化(2024年4月)に備えられる 相続登記の義務化により、 相続後3年以内に登記しないと10万円の過料が発生します。 事前贈与しておけば、相続時の煩雑な登記や書類集めが不要になり、 相続人の負担を大きく減らせます。
2|自宅を子どもに贈与するデメリット(要注意ポイント) ① 贈与税が高額になる可能性がある(最大55%) 贈与税は、相続税より税率が高いのが特徴です。 たとえば 自宅評価が2,000万円 → 贈与税は約300万円前後 というケースも珍しくありません。 特に、 住宅地の評価が高い 都市部の自宅 毎年贈与ではなく一括で贈与する 場合は税負担が大きくなります。 ② 親が住み続けると「贈与として認められない」危険がある 親が贈与後もその自宅に住み続けると、 “名義を変えただけで贈与として認められない” というリスクがあります。 これは「名義預金問題」と同じで、 税務署は“形式より実質”で判断するため、 住居の使用料を払っていない 生前は親が管理・支払い 実質的な所有者が親のまま の場合、 相続税として課税される可能性があるのです。 ③ 親の生活が不安定になる(贈与することで資産が減る) 自宅を贈与した後、 老後資金が不足 介護施設費の支払いが困難 不動産を担保にできなくなる など、親の生活を圧迫するケースがあります。 特に その家が唯一の資産の場合は要注意です。 ④ 将来の売却がやや複雑になる(子どもの譲渡税が重い) 親名義で売却した場合は、 居住用3000万円控除を使えますが、 贈与を受けた子どもが売却する場合 住んでいない限りこの控除は使えません。 つまり、 贈与 → 子どもが売却 の場合は税金が増える可能性があります。 ⑤ 暦年贈与が「相続税精算課税」にまとめられるリスク 2024年以降、贈与のルールが変更され、 税務署は「相続対策の抜け道」を厳しくチェックしています。 贈与を繰り返した結果、 まとめて相続財産として課税されるケースもあり、 むやみに贈与を進めるのは危険です。
3|結論:自宅の贈与は“状況に応じて最適解が変わる” 自宅の贈与が向いているケース 親が高齢で認知症リスクが高い 子どもが同居・将来住む予定が明確 資産を早めに確定したい 相続税が発生する可能性がある 権利関係をシンプルにしておきたい 贈与を避けたほうが良いケース 親の老後資金に不安がある 子どもが売却する可能性が高い 自宅評価が高く贈与税負担が大きい 親がそのまま住み続けたい
4|ぱんだはうすからの総合アドバイス 自宅の贈与は“節税メリット”より“認知症対策”としての価値が高い 税金面だけで決めると失敗しやすい 親の生活、兄弟間の公平性、将来の売却を総合的に判断する 贈与するなら、名義変更後の住まい方や管理方法までセットで設計すること 自宅の贈与は一度行うと取り消せないため、 相続・贈与・不動産の3分野を横断的に理解できる専門家に相談することが最も重要です。