☆死因贈与契約と遺言の違い

死因贈与契約と遺言の違い|メリット・デメリット・実務上の注意点を徹底解説

相続対策を考える際、必ず比較対象として挙がるのが 「死因贈与契約」と「遺言(遺言書)」 です。 どちらも「財産を死後に渡す」点は共通していますが、 義務の重さ・撤回の可否・税金・不動産の名義変更・トラブルリスクなど、実務ではまったく性質が異なります。 本記事では、法律の仕組みから、不動産のケースで起きやすい問題まで、司法書士・不動産業者の現場目線でわかりやすく解説します。

 

■ 1. 死因贈与契約とは? 契約(双方の合意)で死後の財産の承継を約束する仕組み です。 契約なので、贈与者と受贈者の「双方の合意」が必須 口頭でも成立するが、トラブル防止のため文書化が必須 撤回は原則として自由ではない(契約だから) 死後の贈与として扱われるため、相続税が課税される ● メリット 受贈者が確実に財産を受け取れる 贈与者が亡くなる前に、相手と条件を確認できる 遺言と違い、相手の承諾が必須なので意思確認トラブルが少ない ● デメリット 簡単に撤回できない 受贈者が先に死亡した場合は契約が意味をなさない 不動産の場合、贈与者死亡後の名義変更に手間がかかる

 

■ 2. 遺言(遺言書)とは? 贈与者一人の意思表示で死後の財産処理を指定できる仕組み です。 代表的な形式は以下の通り: 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言(現場ではほぼ使われない) ● メリット いつでも撤回・変更が可能(これが最強のメリット) 公正証書遺言なら法的安全性が非常に高い 財産内容の変更にも柔軟 ● デメリット 受け取る側の同意が不要なため“争族”になりやすい 自筆証書は方式不備で無効リスク 公正証書遺言は費用がかかる 遺留分の問題が発生する可能性

 

■ 3. 最大の違いは「拘束力」と「撤回のしやすさ」 ● 死因贈与契約 契約なので撤回が難しい 約束した以上、贈与者の死亡後は確定的 相手の承諾があるためトラブルは少ないが、柔軟性は劣る ● 遺言 何度でも書き直せる 法的には強力 ただし、遺留分侵害があると揉める可能性が高い

 

■ 4. 不動産で起きやすい違い(実務で重要) ● ① 死因贈与は「負担付き」が可能 例: 「家をあげる代わりに、私が亡くなるまで面倒を見てほしい」 → これが死因贈与では明確に契約として成立する。 遺言では「負担付遺贈」は可能だが、相手の同意がいらない分、履行義務で揉める。 ● ② 不動産登記の流れが違う 死因贈与:贈与契約書が必要 遺言:遺言執行者の有無で手続が変わる 司法書士の現場では、死因贈与の方が登記資料が多く、手続きが複雑になるケースが多い。 ● ③ 相続税はどちらも対象 ただし、死因贈与の場合は「贈与税ではなく相続税」として扱われます。 ■ 5. 死因贈与と遺言はどう使い分けるべき? 項目 死因贈与契約 遺言 相手の同意 必要 不要 撤回 原則不可 何度でも可能 トラブルリスク 少ない やや高い 不動産手続 やや複雑 遺言執行者がいればスムーズ 負担付きの契約 明確に可能 実務では揉めやすい ■ 6. 実務からのアドバイス(ぱんだはうす目線) ● ① 遺言の方が柔軟で失敗が少ない → 特に不動産を含む場合、書き換えができるのは大きなメリット。 ● ② 死因贈与は「介護の見返り」など対価がある場合に最適 → 介護した子に家を渡す、などは死因贈与の方が強い。 ● ③ 登記の負担は死因贈与の方が重い → 負担付死因贈与の場合は司法書士への相談が必須。

 

■ まとめ 死因贈与契約と遺言は似ているようで、 「契約」か「一方的な意思表示」か という根本的な違いがあります。 柔軟に変更したい → 遺言 双方の約束として確実に残したい → 死因贈与契約 不動産が関わる → 司法書士のチェックが必須 どちらを選ぶかは状況次第ですが、将来のトラブルを避けるためには、いずれも専門家との事前相談が最も重要です。

2025年12月13日