相続財産が不明な場合の財産調査|見落としを防ぐための実務ポイント
相続が発生した際、「どこに財産があるのか分からない」「預金口座が複数ありそうだが把握できない」「不動産の名義がどうなっているのか不明」というケースは珍しくありません。特に単身世帯の増加や高齢者の認知症進行などにより、相続財産の全体像がつかめないまま手続きを進めるリスクが高まっています。 相続財産が不明なまま相続手続きを行うと、 遺産分割協議が進まない 相続税申告が期限に間に合わない 後から財産が見つかり再分割のトラブルへ発展 といった問題が起きます。 ここでは、実務で行うべき財産調査の流れと、見落とされやすいポイントを徹底解説します。
■ 1. 銀行口座・預金の調査方法 相続財産で最も見落としが多いのが 金融資産(銀行預金・証券) です。 ● 銀行の「名寄せ調査」 銀行名が分からない場合でも、 亡くなった方の住所地周辺の金融機関に照会することで、口座の有無を確認できます。 通帳が見つからない ネット銀行を利用していた 過去の職場で給与口座が複数存在した こうした場合、名寄せ調査が有効です。 ● ネット銀行も忘れず確認 楽天銀行・PayPay銀行・住信SBIなどは通帳がありません。 メール履歴、スマホアプリ、クレジットカード利用履歴などから手掛かりを探します。
■ 2. 不動産の調査(登記情報・固定資産税) 不動産は「自宅」だけではありません。 山林・農地・投資用マンション・別荘・駐車場などが眠っているケースも多いです。 調査の流れは以下の通り。 ● 法務局での登記情報の取得 本籍地や住所変更を追う 名寄せを活用し所有不動産を網羅確認 ● 市区町村での固定資産税課税台帳の閲覧 登記のない土地(未登記)や持分だけ所有している土地なども判明することがあります。
■ 3. 生命保険・死亡退職金の調査 生命保険は 相続財産に含まれない非課税枠のある重要項目ですが、 被保険者本人が家族に伝えていないケースも多いです。 ● 調査のポイント 保険会社からの郵送物 引き落とし先の銀行口座 生命保険契約照会制度(生命保険協会) 特に生命保険協会の照会制度は、相続財産が不明な場合に有効です。
■ 4. 借金・ローン・連帯保証の調査 相続財産が「プラス」だけとは限りません。 借金・カードローン・住宅ローン・連帯保証は、調査漏れがあると危険です。 ● 調べるべき情報 信用情報機関(CIC・JICC) クレジットカード会社の利用履歴 銀行ローン明細 借金が不明なまま相続すると、最悪の場合は 相続放棄の期限(3ヶ月)を過ぎてしまうことになります。
■ 5. その他の見落とされやすい財産 ● 株式・投資信託・暗号資産 暗号資産(ビットコイン等)はログイン情報がないと調べにくいため特に注意。 ● 自動車・バイク 登録情報は陸運局で確認可能。 ● 貴金属・骨董品 自宅のどこにあるか家族も把握していないことが多い。 ● 会社の株・法人財産 中小企業の経営者の場合、会社の持分も要確認。
■ 6. 相続財産調査を効率的に行うコツ ● □ チェックリストを作る 預金・不動産・保険・借金・動産などをリスト化。 ● □ 相続人全員で情報を共有する 後から「知らなかった」「聞いていない」トラブルを防止。 ● □ 専門家(司法書士・税理士)へ早めに相談 相続税の申告期限(10ヶ月)を意識し、早めに動くことが重要。 ぱんだはうすとして不動産の調査支援も可能です。 特に「土地や建物がどれだけあるか分からない」といったケースでは、登記情報の洗い出しは必須です。