☆法定相続分だけで分けてはいけない理由

法定相続分だけで分けてはいけない理由|公平な相続のための実務ポイント

相続が発生すると、まず多くのご家族が参考にするのが 「法定相続分」 です。 民法で定められた分け方で、妻が1/2・子どもが1/2、子どもが複数なら等分──といった基本ルールが存在します。 しかし、実務では 法定相続分だけを機械的に適用すると、むしろ争いが生まれるケース が少なくありません。 不動産を中心とした相続財産では、法定相続分が“現実と合わない”ことが多いためです。 ここでは、なぜ法定相続分だけではうまくいかず、どのような分割が望ましいのかを詳しく解説します。

 

1. 法定相続分はあくまで「基準値」であり、家庭の事情を反映していない 法定相続分は国が定めた全体の基準に過ぎず、各家庭の状況は全く考慮されていません。 ● 例えば、以下の事情は法定相続分では反映されません 介護負担を担ってきた子 親と同居して生活費を負担してきた子 親の事業を支えてきた子 財産の形成に貢献した配偶者 成人して独立し、ほとんど交流のなかった相続人 つまり「家族それぞれが果たした役割」が反映されないため、実態に合わない分割=不満や争いの火種 になります。

 

2. 相続財産の多くは“分けづらい不動産”である 相続財産の約7割は不動産と言われています。 しかし不動産には「等分しにくい」という特性があります。 ● 典型的な問題 自宅は1つしかないため、相続人が複数なら誰が取得するかで揉める 土地を分筆すると価値が下がる 共有名義にすると売却・管理で必ずトラブルが起きる 法定相続分で共有にすると“誰が住むのか”が曖昧になる 不動産は現金のように1/2・1/3と分けられないため、法定相続分で機械的に分けると、共有状態が発生しやすくなります。 共有は相続トラブルの最も大きな原因です。

 

3. 法定相続分では「寄与分」「特別受益」を考慮できない 相続では、各相続人の事情によって取り分が調整される仕組みがあります。 ● 寄与分 被相続人の療養看護、事業への貢献、家業手伝いなどで財産維持・形成に貢献した人の取り分を増やす制度。 ● 特別受益 生前贈与や住宅取得援助など、相続人が事前に“多く”受けている場合に精算する制度。 法定相続分の配分だけを重視すると、この重要な調整がまったく反映されません。 結果として「不公平だ」と争いが発生します。

 

4. 法定相続分で分けると“誰も得しない共有状態”になりがち 法定相続分に従って不動産を分ける典型例が以下です。 自宅を配偶者と子が半分ずつで共有 土地を兄弟3人で1/3ずつ共有 アパートの共有名義化 共有状態になると、 売却に全員の同意が必要 管理・修繕負担の不公平 相続が二代、三代と続くと共有者が増え、収拾不能になる という深刻な問題が起きます。 共有名義は、時間が経つほど“解消できなくなる”負の資産 になりがちです。

 

5. 法定相続分は「納税資金の確保」も考慮していない 相続税が発生する場合、誰がどの財産を引き継ぐかによって納税資金が大きく変わります。 不動産を取得した相続人→現金が不足し納税困難 預金を取得した相続人→負担が重いと不満 法定相続分では “誰が税金を払うか” が考慮されていないため、後からトラブルになります。

 

6. 理想は「法定相続分を参考にした話し合いで最善を決める」こと 法定相続分は参考値として使い、実際は以下の要素を踏まえて 遺産分割協議で柔軟に決める ことが重要です。 家族の事情 不動産の特性 今後住む人 スムーズな売却の可否 納税資金対策 介護・貢献度 生前贈与の有無 遺言書や家族信託で事前に方針を固めておくことも、有効なトラブル防止策になります。

 

ぱんだhouseのひとこと 法定相続分=正しい分け方、ではありません。 大切なのは “あなたの家族にとって最も公平で後悔のない分割” を選ぶことです。 不動産の評価・分割方法の提案・売却シミュレーションなど、不動産専門の視点が加わることで、争いを避けつつ最良の相続に近づけます。 ぱんだhouseでは、共有回避のアドバイスや生前対策のご相談も承っています。

2025年12月13日