老々相続(ろうろうそうぞく):高齢化社会の新たな課題と解決策
1️⃣ 老々相続とは 「老々相続」とは、高齢者が高齢者から財産を相続することを指します。 近年の日本は平均寿命が延び、相続時の相続人も70代・80代となるケースが急増しています。 例: 90歳の親が亡くなり、70歳の子が相続人になるケース 相続人自身が高齢で介護や生活資金に不安を抱える中で相続が発生 つまり、相続人が「老後を迎えている状態」で相続することから「老々相続」と呼ばれます。
2️⃣ 老々相続の主な問題点
① 相続税・手続きの負担が大きい 相続人自身が高齢で体力・判断力が低下しており、複雑な相続税申告や登記手続きが負担に。 期限管理(相続税10か月以内、登記3年以内)を守れずトラブルになることも。
② 老後資金・介護資金とのバランス 相続人自身が年金生活で収入が限られるため、相続税や不動産維持費を負担できないケース。 「自宅は相続したけれど維持できない」という問題が生じやすい。
③ 認知症リスク 相続人が認知症を発症していると、遺産分割協議に参加できず手続きが止まる。 後見制度の利用が必要になり、時間と費用がかかる。
④ 二次相続リスク 高齢の相続人が相続してすぐに亡くなると、短期間に二度の相続が発生。 相続税負担が二重に発生しやすい。
3️⃣ 解決策と対策の方向性
✅ 生前対策の強化 生前贈与:相続人がまだ元気なうちに財産を移転(暦年贈与、相続時精算課税制度の活用) 信託制度:家族信託を利用し、判断力があるうちに財産管理を委ねる 遺言書の作成:遺産分割で揉めないように事前に明確化
✅ 二次相続を見据えた設計 相続税は一次・二次で合算して試算すべき 配偶者控除を使いすぎず、次の相続で税負担が増えないよう分散相続
✅ 成年後見制度や任意後見制度の活用 認知症リスクがある場合は、後見制度を検討 任意後見契約を元気なうちに結んでおくと安心
✅ 不動産対策 老朽化した不動産を相続しても維持困難 → 生前に売却して換金化 小規模宅地等の特例や空き家特例を活用し、税負担を軽減
4️⃣ 老々相続の対応手順
ステップ1:現状把握 相続人・被相続人双方の年齢、健康状態を確認 財産一覧(不動産・預貯金・株式など)を作成
ステップ2:専門家によるシミュレーション 税理士・司法書士に依頼して相続税・二次相続までの試算 生前贈与と遺言の有無を確認
ステップ3:生前対策の実行 遺言書作成、公正証書化 家族信託や贈与による資産移転 不動産の売却や活用(賃貸・リフォームなど)
ステップ4:相続発生後の迅速対応 相続人が高齢の場合、代理人(司法書士・弁護士)を活用 成年後見制度を利用して手続きの停滞を防止
5️⃣ まとめ 「老々相続」は、長寿社会の日本で避けて通れない課題です。 高齢相続人にとって、手続き・税金・不動産維持は大きな負担 認知症や二次相続リスクもあり、放置すると深刻な問題に発展 解決策は「早めの生前対策」です。 遺言・贈与・信託で財産の承継を設計 二次相続までを見据えた相続税シミュレーション 専門家を活用して「将来のトラブル」を事前に防止 老々相続を円滑に乗り越えることが、家族の安心と資産の有効活用につながります。