☆相続税が払えないときの分割納付・物納制度

相続税が払えないときの分割納付・物納制度|知っておくべき救済策と注意点

相続税は現金一括で納付することが原則ですが、実際には「遺産の大半が不動産で現金が足りない」という相続が非常に多く、納税資金が不足するケースは珍しくありません。そこで国は 分割納付(延納)と 物納 という救済制度を用意しています。しかし、どちらも申請要件が非常に厳しく、準備不足だと認められないことも多いのが実情です。本コラムでは、それぞれの制度の仕組み・メリット・注意点を、不動産相続の専門店「ぱんだはうす」目線でも分かりやすく解説します。

 

1|相続税が払えないケースはなぜ多い? 相続税に関する相談の中でも、「お金が足りない」という問題は常に上位にあります。特に次のパターンは要注意です。 ▶ 現金がほとんどなく不動産ばかりの相続 地方・郊外では典型的で、 自宅 畑 山林 など「評価額は高いが売れるまで時間がかかる資産」が多く、納税までに現金化できない問題が発生します。 ▶ 相続人の手持ち資金が少ない 相続税の納税期限は 「相続開始から10か月」 のため、準備期間が短く、資金調達が間に合わないことも。 ▶ 共有名義や未登記不動産で売却できない 名義が整理できず売れないケースは多く、結果として納税資金の不足につながります。

 

2|相続税の分割納付(延納)とは? 分割納付(延納)とは、相続税を分割して支払う制度で、最大 20年 の分割払いが可能です。ただし利子税が加算されるため、長期化するほど負担は重くなります。 【延納の主な要件】 相続税を金銭一括で支払うことが困難であること 延納に必要な担保(不動産など)が提供できること 期限までに延納申請書と担保提供関係書類を提出 ※少額の場合は担保が不要なケースもあります。 【延納期間】 不動産などを含む一般財産:最長20年 金融資産中心:最長5年 【延納のメリット】 不動産を急いで安売りする必要がない 資金計画に合わせて支払える 【延納のデメリット】 利子税の負担が大きい 担保の設定が必要で手続きが煩雑 期限までの申請が絶対条件で、遅れると認められない 不動産が多いご家庭では非常に有効ですが、「準備して初めて使える制度」です。

 

3|相続税の物納とは?不動産で納税できる制度 物納とは「現金ではなく相続した財産そのものを国に渡して納税する制度」です。最終手段であり、延納よりもさらに要件が厳格です。 【物納の主な要件】 延納しても納税が困難であること(延納の不認可または不適) 物納に適する財産であること(優先順位:不動産>有価証券>動産) 物納財産が管理可能な状態であること(境界確定、権利関係の明確化) 申請期限内に必要書類をすべて揃えること 【物納の対象財産】 物納はすべての不動産が認められるわけではありません。 以下のような場合は不適格です。 接道義務を満たさない土地 越境物件 未登記建物 共有持分のみの不動産 借地権・底地の複雑な権利関係 つまり、権利関係が不明確な不動産は物納できません。 【物納のメリット】 現金がなくても相続税を納められる 不動産の売却が不要になる 【物納のデメリット】 申請のハードルが非常に高い 国が引き取れる不動産は限定的 事前準備に時間がかかる

 

4|延納と物納は“期限内の準備”がすべてを決める 延納・物納はどちらも 「相続税の申告期限(10か月)」 が命綱です。 必要書類は膨大 物件調査が必要 名義や境界の整理も実施 10か月は意外と短く、「気づいたときには申請が間に合わない」というケースが本当に多いです。

 

5|不動産の相続に強い専門家へ早めの相談が必須 特に不動産を多く所有するご家庭では、延納や物納の申請書類に 評価証明 地積測量図 境界確認書 名義調査書類 などが必要となり、税理士だけでなく 不動産の専門家・司法書士 の協力が欠かせません。 ぱんだはうすでは、不動産評価・売却見込み・共有名義整理などをワンストップでサポート可能です。 延納や物納を見据えた早めの動きを強く推奨します。

2025年12月13日