建物と土地の名義が違うときの相続対応|放置すると売却も相続もできない?
不動産の相続相談で非常に多いのが、 「建物の名義は父だが、土地は祖父の名義のまま」 「親の家に住んでいるが、土地だけ第三者の名義だった」 という “土地と建物の名義不一致” のケースです。 一見わかりにくい問題ですが、実はこの状態を放置すると、 相続登記ができない/売却できない/権利関係が複雑化する など重大トラブルの原因になります。 この記事では、名義が異なる不動産の相続で何が起こるのか、どう対応すべきかを不動産専門家の視点から詳しく解説します。
■ なぜ土地と建物の名義が違うケースが多いのか? ① 親族間での借地(親の土地に子が建物を建てた) 昔は、 「親の土地に子どもが家を建てる」 というケースが一般的で、土地と建物の名義がバラバラになりやすい構造でした。 ② 祖父母名義の土地を放置(未相続) 土地の名義をそのままにして建物だけ名義変更→結果的に名義不一致に。 ③ 夫婦間で土地と建物を分けて所有している 節税目的や住宅ローンの関係で共有名義にしたり、土地と建物を別名義にしたケースもあります。
■ 名義が一致していないと起きるトラブル ① 相続登記が複雑になり手続きが止まる 土地の相続人と建物の相続人が異なれば、それぞれの相続手続きが必要。 ・土地:A家の相続人全員 ・建物:B家の相続人全員 両方の話し合いがまとまらなければ登記が進みません。 ② 売却がほぼ不可能になる 購入者から見ると、 土地の権利が不明 建物だけ購入しても土地の利用権がない 借地かどうかも不明 など非常にリスクが高いため、不動産会社も取扱いを嫌がります。 結果的に売却まで数年かかる例も。 ③ 土地所有者から立ち退きを求められる可能性 第三者名義の土地に建物が立つ場合、 土地の所有者が変わると賃料値上げ・契約解除・立ち退き要求 などのリスクも発生します。 ④ 固定資産税の負担が曖昧になり揉める 土地の税金は土地所有者へ、建物の税金は建物所有者へ届きます。 家族間で曖昧にしていた場合、相続後に 「誰が払うの?」 とトラブルの種に。
■ 建物と土地の名義が違うときの相続の進め方 ① まず現況確認(登記簿・地目・借地契約) 以下の情報を確認します。 土地の登記名義 建物の登記名義 地目(宅地?雑種地?) 借地契約の有無 使用貸借か賃貸借か 地代の支払い状況 ここを誤ると相続全体の戦略がブレます。 ② 相続人を確定する 土地と建物の相続人が異なることが多いので、 両方の家系図を作って相続人を確定 します。 司法書士・行政書士のサポートが有効です。 ③ 遺産分割協議を行う パターンは大きく3つ。 ● 土地と建物を同一人が相続する(最もスムーズ) 売却・管理がラクでトラブルが起きにくい。 ● 土地と建物を別の相続人が引き継ぐ(非推奨) のちの売却・立替・担保設定が難しくなる。 ● 売却して換金し、相続人で分ける 協議がまとまるなら最も公平。 ④ 名義変更(相続登記)を実施 2024年から相続登記は義務化され、 放置すると過料(罰金)の可能性 があります。 土地・建物それぞれ登記手続きを行います。
■ パンダhouseからひとこと(不動産の現場より) 「土地と建物の名義が違う」ケースは、現場では非常に多く見られますが、 相続が発生してからでは手続きが一気に複雑化 します。 特に売却を前提とする場合、 ・未登記 ・第三者名義 ・相続未了 が絡むと、買主側の金融機関が融資を出さないケースが多く、 結果的に売却まで1〜2年かかることも珍しくありません。 相続発生前から名義確認し、必要な整理をすすめておくことを強くおすすめします。