☆長期未登記の土地・建物を相続した場合

📘 長期未登記の土地・建物を相続した場合のリスクと解決策

相続の相談の中でも特に多いのが、「親や祖父母の代から未登記のまま放置されていた土地・建物」のケースです。 登記簿を確認すると所有者が亡くなったまま、あるいは戦前の名義のまま…ということも珍しくありません。 未登記不動産は、相続手続きを複雑にし、売却や管理にも大きな支障をきたします。 ここでは、長期未登記物件を相続した場合の問題点と、スムーズに解決するための実務的ポイントを詳しく解説します。

 

■ 1. まず「未登記」は違法ではないが“危険” 建物の登記は義務ではなく、未登記でも法律上は直ちに違法ではありません。 しかし、未登記のまま長期間放置すると以下のトラブルが発生しやすくなります。 ● 所有者が誰かわからなくなる 固定資産税の課税名義人は市町村が把握していても、 登記簿上の所有者が古いままだと、売却・相続登記ができません。 ● 売却が事実上できない 買主は登記が移転できない物件を購入しないため、 未登記のままでは市場に出せず、資産価値が下がります。 ● 境界トラブルが解決しにくい 現所有者の証明が曖昧だと、 筆界確認・隣地承諾・測量などが進まなくなります。 ● 相続するたびに手続きが雪だるま化 亡くなった名義人が複数代にわたって登記されていないと、 手続きを遡る「数次相続」になり、相続人が数十人に膨れ上がることも。

 

■ 2. 未登記物件を相続したとき最初にすべきこと 未登記の場合、手続きの順序を間違えると大幅に時間がかかります。 まずは以下を確認しましょう。 ●(1)固定資産税の名寄帳(なよせちょう)を取得 現在の課税対象者・地番・家屋番号などを確認できます。 ●(2)「法務局」で登記情報を調査 登記簿上の名義人が誰なのか、建物の登記があるのかを確認。 ●(3)相続関係図を作成 登記簿名義人まで代を遡る必要があるため、 戸籍の収集は通常よりも多く必要です。

 

■ 3. 建物が未登記の場合の実務 建物は未登記の場合、「表題登記」からスタートします。 ● 表題登記に必要なもの 建物図面 現況の写真 測量または建物の配置図 家屋調査士(専門家)の関与 表題登記が完了してはじめて、 所有権保存登記 → 相続登記という流れで進めます。 特に古い家屋は図面がないため、 家屋調査士による実測・図面作成が必須になります。

 

■ 4. 相続人が多い・行方不明者がいる場合 長期未登記の典型的な問題は「相続人の把握」が困難になること。 行方不明者や高齢で判断能力がない相続人がいる場合、以下の対応が必要となります。 ● 行方不明者 家庭裁判所で 不在者財産管理人 を選任し、 その管理人と遺産分割協議を行うことになります。 ● 判断能力が低下している相続人 成年後見人を選任し、後見人が遺産分割協議に参加します。 時間と費用はかかりますが、 手続きを進めるために避けられないステップです。

 

■ 5. 放置し続けると“相続登記の義務化”に引っかかる 2024年より相続登記が義務化され、 相続を知ってから3年以内に相続登記が必要になりました。 未登記状態を放置すると、 最終的には 過料の対象 になる可能性があります。 未登記の場合でも、 不動産の存在を知った 自分が相続人だと認識した この時点からカウントされるため要注意です。

 

■ 6. 解決に必要な専門家 長期未登記の場合、複数の専門家が関わることが一般的です。 司法書士:登記・戸籍収集・相続人確定 土地家屋調査士:表題登記・測量・建物図面作成 不動産会社:売却・管理・再建築の可否調査 弁護士:相続人同士の紛争、行方不明者対応 特に売却を予定する場合は、不動産の実務が不可欠です。 ■ 7. 売却までの具体的なステップ 長期未登記不動産を売却する場合は、以下の流れで進めます。 課税情報・登記情報の調査 戸籍の収集・相続人特定(数次相続対応) 建物表題登記または建物滅失登記 相続登記 境界確定(必要に応じて) 不動産査定 → 売却活動 残置物の撤去・空き家管理 売却は最後のステップであり、 そこに至るまでの前段階が非常に大きな作業となります。

 

■ まとめ 長期未登記の土地・建物を相続した場合、 最も大変なのは「登記が放置されてきた期間が長いほど、作業が膨らむ」という点です。 しかし、適切な順序で手続きを進めれば確実に解決できます。 ポイントは以下の通り: 登記は義務ではなくても放置は危険 相続人の確定が最重要 建物は表題登記が必要になる 売却には測量・境界確認が必須 相続登記義務化により放置リスクは増大 未登記不動産は、早めの着手で負担が大きく減ります。

2025年12月13日