空家特例 ケーススタディ

空き家特例 3,000万円特別控除 ― ケーススタディで学ぶ実務ポイント

 

1. 空き家特例とは? 被相続人(亡くなった方)が一人暮らしをしていた住宅を相続した際、その不動産を売却することで発生する譲渡所得から 最大3,000万円を控除できる制度。 平成28年に導入され、空き家問題解消と中古住宅市場の活性化を目的としています。

 

2. 適用要件 特例の利用には、以下の条件を満たす必要があります。 被相続人が一人で居住していた家屋(または相続開始直前に居住していた家屋)であること 相続から3年後の年末までに売却すること 売却価格が1億円以下であること ①家屋を耐震リフォームして売却、または②家屋を取り壊して更地で売却すること 区分所有建物(マンション等)は原則対象外

 

3. ケーススタディ①:相続した空き家をそのまま売却 事例設定 被相続人:父(享年88歳) 相続人:長男 相続財産:実家(木造一戸建、昭和55年築、評価額2,000万円) 長男が売却した価格:2,500万円 取得費:500万円(購入時) 通常の計算 譲渡所得 = 売却価額 - 取得費 - 譲渡費用 = 2,500万円 - 500万円 = 2,000万円 長期譲渡所得税率20.315%をかけると、約406万円の税金発生。 空き家特例適用後 譲渡所得 2,000万円 - 3,000万円控除 = 0円 → 課税なし! 👉 築古住宅をそのまま売却する場合でも、要件を満たせば大幅に税負担を軽減可能。

 

4. ケーススタディ②:更地にして売却 事例設定 実家を取り壊して更地で売却 解体費用:300万円 売却価格:3,200万円 取得費:600万円 通常の計算 譲渡所得 = 3,200万円 - 600万円 - 300万円 = 2,300万円 課税額:2,300万円 × 20.315% = 約467万円 空き家特例適用後 譲渡所得 2,300万円 - 3,000万円 = 0円 👉 解体費用をかけても、控除で非課税になるケース。

 

5. ケーススタディ③:適用できない失敗例 被相続人が 老人ホームに入居していた期間が長い(入居直前まで実家を居住の用に供していない) 相続人が相続後に 自ら居住してから売却した 売却価格が1億円を超えた 👉 こうした場合は特例が使えず、多額の譲渡税が発生するので要注意。

 

6. 実務上のポイント 相続発生後すぐに方針を決める:売却まで「3年以内」という期限がある 登記・遺産分割協議を迅速に進める:相続登記を先延ばしにすると、期限に間に合わなくなる 贈与と混同しない:相続登記を飛ばして子供名義にして売却すると、贈与税課税の可能性あり 譲渡費用も活用:解体費・仲介手数料・測量費用も譲渡所得から控除できる

 

7. まとめ 空き家特例は、譲渡所得税をゼロにできる強力な制度ですが、 「要件確認」と「売却までのスケジュール管理」が最大の肝」。 特に、老朽化した実家や遠隔地の不動産を処理する際には、 ✔ 早期に専門家に相談 ✔ 解体 or 現状売却の選択 ✔ 相続登記・遺産分割の整理 をセットで進めることが、円滑な相続不動産の整理につながります。

2025年09月02日