意思能力と痴呆

🧠意思能力と不動産売却 〜被相続人が認知症の場合に直面する問題と解決策〜

 

📝1. 意思能力とは? 「意思能力」とは、自分の行為の結果や意味を理解し判断できる能力のことです。 法律行為(契約・売買など)を有効に行うためには、行為時に意思能力を備えていることが前提となります。 意思能力を欠く状態で行われた法律行為は無効になります。 成年後見制度や任意後見制度の対象となる判断基準でもあります。

 

⚠️2. 被相続人が認知症の場合の主な問題点・課題

● 契約の無効リスク 不動産売買契約を締結しても、意思能力がないと判断されれば契約は無効。 売却後に親族が「判断能力がなかった」と主張して争いになる事例が多い。

● 詐欺・不当な取引の危険 認知症により判断力が低下していると、不当に安く買いたたかれるなどの被害リスクが高まる。

● 相続税・維持費の負担 不動産を保有し続けると固定資産税や管理費などの維持コストが発生し、早期売却が望まれても手続きが止まってしまう。

● 売却できず相続が発生 生前に売却できず、相続発生後に共有相続となり、さらに手続きが複雑になる(共有者全員の同意が必要)。

 

💡3. 解決方法と実務的手順

① 任意後見制度を活用(将来型) 本人にまだ意思能力がある段階で契約を結び、将来意思能力がなくなった場合に備えて任意後見人を選任。 公正証書で任意後見契約を締結 → 判断能力が低下した時点で家庭裁判所に申し立て → 後見開始。

② 成年後見制度を利用(現時点で意思能力がない場合) すでに認知症が進行している場合は成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう。 後見人が就任した後、裁判所の許可を得て不動産を売却することが可能。 売却代金は被後見人(認知症の本人)の財産として管理され、生活費・施設費用などに充当できる。

③ 信託制度(家族信託)を活用 本人が意思能力を保っているうちに、不動産を信託財産として子や信頼できる家族を受託者に設定。 将来、本人が認知症になっても、受託者が契約主体として売却・管理・運用が可能。

 

📌4. 実務での注意ポイント 医師の診断書や意思能力の有無を示す資料を準備(後見申立や契約の有効性判断に必須)。 成年後見人による売却には家庭裁判所の許可が必要(無断売却は無効)。 任意後見や家族信託は意思能力があるうちに契約しておくことが極めて重要。 不動産業者や買主も、本人に意思能力がない疑いがある場合は取引を避ける傾向が強い。

 

🌸5. まとめ 被相続人が認知症などで意思能力を欠くと、不動産の売却は原則としてできない。 生前の早期対策(任意後見・家族信託)が最も有効で、  意思能力が失われた後は成年後見制度を通じて売却を進める。 法的手続きと裁判所の関与が必須となるため、早めに専門家(司法書士・弁護士・税理士)に相談することが重要。

2025年09月27日