1. 遺産分割協議とは 相続人全員が集まり、被相続人の財産をどう分けるか話し合う手続き。 全員一致が原則(1人でも反対すれば成立しない) 協議成立後は「遺産分割協議書」を作成し、相続登記や金融機関手続きに利用する 裁判所は関与しないが、合意できなければ家庭裁判所で調停・審判へ
2. 遺産分割の基本ルール 法定相続分がベース(民法900条) 遺言がある場合は原則それに従う 遺留分を侵害する遺言は争いの火種になる 特別受益・寄与分の調整がしばしば問題になる
3. ケーススタディ①:兄弟2人で実家を相続 前提条件 父が他界 遺産:自宅不動産3,000万円、現金2,000万円 相続人:長男・次男 法定相続分 各1/2 → 2,500万円ずつ 協議例 長男が実家を取得(3,000万) 次男に現金2,000万すべてを渡し、差額500万を長男が次男に支払う ✅ ポイント: 不動産は分割が難しいため「代償分割」が有効 「兄が家を守る」という合意形成が早めにできるとスムーズ
4. ケーススタディ②:相続人の一人が行方不明 前提条件 相続人:母・長男・次男(次男が10年以上連絡不通) 遺産:現金5,000万円 手続き 不在者財産管理人を家庭裁判所に選任 その管理人を交えて遺産分割協議 行方不明者の利益を考慮して分割案を調整 ✅ ポイント: 不在者がいると協議はストップ → 司法書士・弁護士の関与必須 放置すると不動産が塩漬けになり資産凍結のリスク
5. ケーススタディ③:相続人間で意見が対立 前提条件 相続人:妻・子2人 遺産:現金3,000万、賃貸アパート6,000万(相続税評価) 長男「アパートは自分が引き継ぎたい」 妻と次男「平等に現金で分けたい」 解決プロセス アパートを長男が取得 → 他の相続人に代償金を支払う 代償金の原資として長男が銀行ローンを組む 裁判所調停に持ち込まれることも多い典型パターン ✅ ポイント: 不動産は「分けにくさ」からトラブルの温床 賃貸経営に関心のない相続人を巻き込むと争いが長期化
6. ケーススタディ④:二次相続を見据えた分割 前提条件 父が他界 相続人:母・子2人 遺産:現金4,000万、自宅3,000万 母は健在で二次相続を想定 分割案 自宅を母が取得(居住権確保) 現金を子2人で分ける(各2,000万) ✅ メリット 母の生活基盤を守れる 子への財産移転も一部前倒し → 二次相続時の税負担を平準化
7. 遺産分割協議の注意点 相続人全員の署名・実印が必須(相続人代表者だけでは無効) 協議書には不動産の登記事項証明書通りの記載が必要 代償分割のために不動産を担保にローンを組むケースもある 感情的対立を防ぐため、第三者(専門家)の関与が有効 税金(相続税・譲渡所得税)にも影響するので税理士チェックは必須
まとめ 遺産分割協議は「相続人全員一致」が絶対条件。 ただし、実務では不動産や行方不明者、感情的対立などによって協議が難航するケースが多い。 👉 ポイントは: 法定相続分をベースに調整 代償分割を活用して不動産を整理 二次相続まで見据えて分割を設計 行方不明者や反対者には裁判所手続きを視野に入れる