売却時のリスク

🏠 不動産売却に潜む「売主リスク」完全ガイド ―― 売却前・売却中・売却後、3つのフェーズで考える 不動産売却というと「いくらで売れるか」「いつ売れるか」に目がいきがちですが、 実は 売主側にも見えにくいリスクが数多く潜んでいます。 一度売買契約を結べば数千万円単位の責任が発生するため、 段階ごとにどんなリスクがあるかを把握し、事前に備えることが極めて重要です。 ここでは、売却を「売却前」「売却中」「売却後」に分け、 それぞれのフェーズごとに代表的な売主リスクと対策を、実例を交えながら詳しく解説します。

 

🟡 売却前 ― まだ動き出す前に潜む落とし穴 売却活動を始める前の段階では、準備不足や情報不足によるリスクが中心です。 この段階でのミスは後から取り返しにくいため、最も慎重さが求められます。

 

① 価格設定の誤り 相場より高すぎれば売れ残り、安すぎれば手取りを減らします。 「高値で査定してくれた会社=優秀」と思い込みがちですが、根拠のない高値は逆効果です。 売却開始直後に反響が乏しいと値下げを迫られ、「売れ残り感」が出てさらに売れにくくなるという悪循環も。 📌 対策:複数社の査定を取り、成約事例や販売戦略もセットで比較する

 

② 税金や市場動向の把握不足 不動産売却には譲渡所得税・住民税などの税金がかかります。 また、住み替え特例・3000万円控除・買換え特例など、適用できれば大幅に節税できる制度もあります。 これを知らずに売却を進めると、「思ったより税金で引かれて手取りが少ない」という事態に。 📌 対策:税理士や仲介会社に事前相談し、シミュレーションを行う

 

③ 権利関係・物件状況の不備 相続登記が済んでいなかったり、抵当権が残っていたりすると、売却を進められません。 また、境界が不明確だったり図面と現況が異なる場合、買主からの信頼を損ねるだけでなく後日の契約不適合責任リスクにも直結します。 📌 対策:登記簿・公図・測量図・ローン残高証明などを事前に確認しておく

 

④ 仲介業者選びの失敗 準備段階で最も多いのが「業者選びの失敗」です。 囲い込みや広告不足、経験不足の担当者に当たると、そもそも買主に情報が届かず売却が長期化・値下がりします。 また、売主にとって不利な価格で早期に売却させ、自社利益を優先するケースもあります。 📌 対策:複数社を比較し、「販売戦略」「過去実績」「報告体制」「囲い込み防止策」を確認する

 

🟠 売却中 ― 契約を結ぶまでに潜むリスク 売却活動を始めてから契約・決済に至るまでの段階では、 法的責任や契約トラブルに発展するリスクが多くなります。

① 告知義務違反(説明義務違反) 雨漏り・シロアリ・越境などの事実を黙って売却すると、 引渡後に発覚した際に損害賠償・契約解除を求められます。 「免責にしたから大丈夫」と思っていても、隠していた事実は免責されません。 📌 対策:売主告知書を正確に作成し、専門家に内容を確認してもらう

② 買主の資金トラブル 買主のローン審査が通らず、契約後に白紙解約となることがあります。 その間に他の買主候補を逃してしまうと、売却が数ヶ月遅れる・値下げを迫られることも。 📌 対策:事前に住宅ローン事前審査済みかどうかを確認する

③ 契約書・重要事項説明の不備 契約内容や説明に誤りがあると、契約解除や損害賠償請求につながる恐れがあります。 宅建士でも経験不足だとミスが起きやすく、売主が連帯して責任を負う場合も。 📌 対策:契約書や重要事項説明書は事前にしっかり内容確認をする

④ スケジュール管理の失敗 引渡日と買い替え入居日がずれたり、残債精算が間に合わなかったりすると、 違約や仮住まい費用、二重ローンなど余計な負担が発生します。 📌 対策:売却と住み替えは同時進行せず、余裕あるスケジュールを立てる

 

🟢 売却後 ― 引渡し後にも残る売主責任 不動産を引き渡した後も、売主の責任は完全に終わりではありません。 ここを軽視すると「終わったと思った取引が再燃」しかねません。

① 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任) 引渡し後に雨漏り・設備故障・シロアリなどが発覚すると、 買主から修繕・損害賠償・契約解除を求められることがあります。 個人間取引では免責にすることも多いですが、免責していても隠していた事実は責任を免れません。

📌 対策:不具合は事前に修繕するか、売主告知書で明示する

② 境界・面積トラブル 確定測量をしていないと、引渡し後に「実測面積が違う」「越境している」などと発覚し、 買主から損害賠償を求められることもあります。 📌 対策:売却前に確定測量を実施する

③ 税務申告トラブル 売却翌年に譲渡所得税の確定申告が必要ですが、申告漏れや計算ミスで追徴課税や延滞税を課されることがあります。

📌 対策:決済後すぐに税理士へ相談し、資料を整理しておく

④ 鍵・書類の管理漏れ 鍵や登記書類などを誤って保管・遅れて渡すと、情報漏洩や損害賠償の恐れも。

📌 対策:引渡し前にチェックリストで最終確認

 

まとめ ― 売主リスクは「段階別」に備える フェーズ 主なリスク 核心対策 売却前 準備不足・業者選びミス 相場調査・税確認・権利整理・業者比較 売却中 告知違反・契約不備・買主選定ミス 書面整備・資金確認・進捗報告 売却後 契約不適合・税申告ミス 事前修繕・測量・税理士相談・書類管理

 

売主側にとって最も重要なのは、「問題が起きてから対処する」ではなく「起きる前に備える」姿勢です。 売却は一度始めると後戻りが難しいため、 売却前・売却中・売却後の各段階でどんな責任やリスクが残るのかを把握し、計画的に動くことが成功への近道となります。

2025年10月21日