📜 遺言(いごん) ― 相続トラブルを未然に防ぐための最強の備え ― �
� 1. 遺言とは? 遺言とは、自分の死後の財産や身分関係について、自らの意思を示しておくための最終意思表示です。 遺言があると、原則としてその内容が優先されて相続が行われるため、相続人間の争いを避けるうえで極めて有効な手段です。 遺言でできる主なこと 財産の分け方(遺産分割の指定) 相続人以外への遺贈(たとえば内縁の妻、孫など) 相続人の廃除・相続人の指定 遺言執行者の指定 未成年後見人の指定 など
2. 遺言の種類と特徴 遺言には民法で定められた方式があり、形式に不備があると無効になるため注意が必要です。 種類 作成方法 メリット デメリット 自筆証書遺言 全文・日付・署名・押印を自筆 手軽・費用がかからない 紛失・偽造・形式不備のリスク 公正証書遺言 公証人が作成(2人の証人立会い) 確実・原本保管され安心 費用と手間がかかる 秘密証書遺言 内容を秘密にしたまま公証役場で手続き 内容を知られずに残せる 実務ではほとんど使われない ※ 2020年7月以降、自筆証書遺言は法務局で保管制度が使えるようになり、改ざん・紛失リスクが大幅に低減しました。
3. 遺言がない場合の問題点 遺言がないと、遺産は法定相続分に従って相続されますが、誰が何を取得するかは相続人全員で話し合う「遺産分割協議」が必要になります。 これが原因で次のようなトラブルが多発します。 意見がまとまらず分割協議が長期化 一部の相続人が勝手に処分して争いに 不動産が共有になり、売却・活用が困難に 二次相続(次の世代の相続)に悪影響 ➡ 「仲が良い家族だから大丈夫」と考えるのは危険です。
4. 遺言を作成する際のポイント (1) 内容の明確化 具体的に「誰に」「何を」「どの割合で」与えるかを明記する 財産目録を別紙で添付しておくと整理しやすい (2) 遺留分への配慮 相続人には最低限の取り分(遺留分)があり、侵害すると「遺留分侵害額請求」される 相続人ごとの遺留分を事前に確認する (3) 実務を担う人を指定 遺言執行者(弁護士・司法書士など)を指定しておくと手続きが円滑 (4) 定期的な見直し 財産状況や家族構成の変化に応じて内容をアップデート
5. 実務上の流れ 財産と相続人を把握(不動産・預貯金・有価証券・借入金など) 相続人構成と遺留分を確認 遺言内容を設計(分割方針、執行者の選任など) 公正証書または自筆証書(法務局保管)で作成 家族に遺言の存在を伝えておく
6. まとめ 遺言は、「相続トラブルを防ぐ唯一の手段」と言えるほど重要です。 遺産を巡る争いは金額の多寡ではなく、感情のもつれから生まれます。 その意味で、遺言は家族への最後の思いやりでもあります。 ➡ 早めに専門家(弁護士・司法書士・税理士)と相談し、 有効で実行性の高い遺言を作成することが円滑な相続の第一歩です。