換価分割 ケーススタディ

ケーススタディ:換価分割で争族を回避した事例

 

📍🏠💱 ① 家族構成と資産の概要 🧩👨‍👩‍👧‍👦📋 被相続人:Aさん(享年82歳) 相続人:長男B(55歳・東京在住)、長女C(52歳・地元在住・無職)、次男D(49歳・海外在住) 主な遺産 居住用不動産(築40年の一戸建):土地建物合わせて時価約3,000万円(固定資産税評価額1,200万円) 預貯金:500万円 有価証券:なし 債務:なし 遺言:なし(公正証書も自筆証書も存在しない) 住居:生前はAさんと長女Cが同居していた

 

② 争いの火種 🌋⚡️🌀 Aさんの死後、葬儀を終えたあと遺産分割の話し合いが始まったが、以下のような 意見の対立があった。 長男B:実家は老朽化しており管理もできないため 売却して現金で3等分 すべき。 長女C:自分が長年介護してきたから 家に住み続けたい。売却には反対。 次男D:海外在住なので 現金で受け取りたい。 → このままでは共有登記になり管理放棄・空き家化するリスクが大きかった。 → しかも固定資産税・修繕費の負担について揉める恐れが高かった。

 

③ 解決策:換価分割で合意へ 🤝💡📑 弁護士・税理士・不動産業者を交えて協議した結果、「一旦全員の共有名義で相続登記した後、売却して換価分割」という手順で合意に至った。 合意内容の主なポイント 不動産は相続人3人で法定相続分(1/3ずつ)で共有登記する。 仲介会社に依頼して市場価格で売却する。 売却代金から仲介手数料・修繕費・税金等を控除した後、純利益を3等分する。 長女Cの介護貢献については「葬儀費用の全額負担を免除する」ことで調整。

 

④ 実際の売却と分配の流れ 🏷️📈💸 相続登記  司法書士に依頼し、3人の共有名義に変更。  登録免許税は固定資産税評価額(1,200万円)×0.4%で 48,000円。 売却準備・査定  複数社から査定を取り、老朽化を踏まえて 売却想定価格3,000万円 に決定。  内装クリーニング・庭の草刈り等に 20万円を支出。 売却実行  仲介会社経由で4か月後に 3,050万円で売却成立。  仲介手数料(3%+6万円)= 966,000円を支払う。 精算処理  売却代金3,050万円 − 仲介手数料96.6万円 − クリーニング費20万円  = 2,933.4万円(分配原資) 現金資産の合算  生前の預貯金500万円も加え、  合計 3,433.4万円 を分配対象とした。 分配  3,433.4万円 ÷ 3人 = 1,144.466万円ずつ(端数切捨て1,144万4,660円)。

 

⑤ 税務上の取り扱い 🧾⚖️📊 相続税 各人の相続分に応じて申告(基礎控除 3,000万+600万×3人 = 4,800万 → 今回は非課税範囲内)。 譲渡所得税 換価分割では、形式上は「相続→売却」なので、売却時に譲渡所得税がかかる。 ただし、取得費加算の特例を活用して課税額を圧縮(税理士が対応)。 → 税務的にも問題なく処理できた。

 

⑥ 教訓と実務的ポイント 📌🧠📋 遺言がないときは「共有」や「感情論」になりやすいが、換価分割なら平等でわかりやすい。 事前に 売却方法・最低価格・経費負担・分配ルール を決めてから売却に入るべき。 住み続けたい相続人がいる場合は、代償分割や優先取得制度との比較も検討。 売却代金は一旦代表相続人名義の口座に入金してから清算する方法が実務的(税務証跡を残す)。 譲渡所得税や取得費加算特例など、税務処理は専門家と必ず連携すること。

 

⑦ まとめ ✨📑🔑 このケースでは、感情的な対立を回避しながら、現実的に資産を処理するために「換価分割」が最適解となった。 相続トラブルの多くは 「公平感の欠如」から発生するため、 売却して現金化 → 平等に分けるという換価分割は、特に地方の不動産や共有リスクが高いケースで非常に有効な選択肢である。

2025年10月04日