財産分与 ケーススタディ

「相続と財産分与の違いとは?知っておくべき法律・税務のポイント」

財産分与 ケーススタディ 🏠💔⚖️

 

ケース1:自宅不動産と住宅ローンがある夫婦

状況 夫(会社員・年収600万円)、妻(専業主婦)、子ども2人 結婚15年目に離婚を決意

財産:自宅マンション4,000万円(住宅ローン残高3,000万円)、預貯金500万円

名義:自宅は夫名義、ローンも夫単独 妻は子どもとともに自宅に住み続けたい希望

問題点 不動産の評価とローン残高の差引き → 不動産価値4,000万円 − ローン3,000万円 = 純資産1,000万円 妻が自宅を取得する場合、ローン返済をどうするか → 銀行は妻単独での借り換えを認めない可能性が高い 代償金の支払い能力

解決策

換価分割:売却し、ローンを完済 → 残った1,000万円を折半

代償分割:妻が自宅を取得し、夫に500万円相当を代償金で支払う。ただし銀行との調整が必要。

ローン継続+住み続け:夫名義のままローン返済を継続し、妻と子が住み続ける形。ただし将来トラブルの火種になりやすい。

👉 実務的には換価分割が最もスムーズ。感情的には住み続けたい希望が強いが、金融機関との調整が最大のハードル。

 

ケース2:退職金と預貯金の分与

状況 夫(55歳・公務員)、妻(専業主婦) 結婚30年で離婚へ

財産:預貯金1,000万円、夫が将来受給予定の退職金3,000万円(勤務先からの概算見込み)

問題点 退職金が「婚姻期間中に形成された財産」として財産分与の対象になるか?

判例上、退職金は「離婚時点で支給見込みが具体的にあるもの」に限って対象となる傾向。

解決策 退職金を将来受け取る前提で、その見込み額の婚姻期間相当分を分与対象に。 退職まで10年以上ある場合は評価が難しく、裁判所の判断次第。

👉 調停実務では退職金の分与割合を低めにする合意が多い。預貯金を多めに妻が取得する調整も現実的。

 

ケース3:夫婦共同経営の事業資産

状況 夫婦で飲食店を経営(夫が代表、妻が従業員兼経理担当) 離婚にあたり、事業用不動産(店舗兼自宅:評価額3,000万円)、事業預金500万円あり 妻は経営に深く関与してきた

問題点 店舗兼自宅の扱い(事業継続か売却か) 妻の貢献度(単なる従業員以上の寄与) 離婚後、妻が収入基盤を失うリスク

解決策 夫が事業を継続 → 店舗を取得、妻に代償金を支払う 共有資産として売却 → 事業を清算し、現金で折半 扶養的財産分与 → 妻の生活再建支援として一定の金銭を上乗せ

👉 事業承継を絡めた財産分与は「清算+生活補償」の二本立てが必要。専門家の介入は必須。

 

ケース4:夫が不倫、有責配偶者の場合

状況 夫が不倫、妻が離婚を決意 財産:自宅2,500万円(ローン残なし)、預金300万円 子ども2人、妻が親権を希望 問題点 不倫という有責事由がある場合、慰謝料請求と財産分与をどう組み合わせるか。 財産分与は公平性が原則だが、慰謝料的要素を上乗せできる。

解決策 自宅を妻が取得、夫に代償金を払わず「慰謝料相当分」として調整 預金300万円は子どもの養育費に充当 慰謝料請求と財産分与を合わせた包括的解決

👉 家庭裁判所も「慰謝料+財産分与」で一体的に判断するケースが多い。

 

まとめ 財産分与は「2分の1ルール」が基本ですが、実際のケースでは 不動産とローンの処理 退職金の評価 事業資産の継続 有責配偶者の慰謝料問題 といった要素が絡み、単純な折半では済まないことが多いです。

実務のポイントは

👉 財産を正確に把握すること

👉 公平かつ将来の生活再建を考慮した解決策を選ぶこと

👉 弁護士・税理士・不動産専門家の協力を得ること

2025年10月02日