🏠💔 元配偶者の不法占有 ― 離婚後も家に居座る元配偶者、どう対応すべきか ―
1. 不法占有とは 不法占有(ふほうせんゆう)とは、 法律上の権限がないにもかかわらず、他人の不動産を占有(使用・居住)している状態のことです。 離婚後に、 「家の名義は夫なのに、元妻が出て行かない」 「共有名義の家に、元配偶者が勝手に住み続けている」 「慰謝料も財産分与も終わったのに、鍵を変えて居座っている」 ――こうした状態は典型的な「不法占有」です。
2. 離婚後の不法占有が起きる背景 (1)共有名義の不明確さ 住宅ローンを夫名義で組み、登記を「夫婦共有」にしているケースでは、 離婚後に所有権割合や使用権の主張がぶつかりやすい。 (2)財産分与・慰謝料の交渉未了 離婚は成立しても、財産分与が終わっていない場合、 「私はまだ権利がある」と元配偶者が主張し続けるケースが多い。 (3)子どもの養育問題 子どもの養育・転校の都合から「しばらく住ませて」と言っていたが、 実際は何年も出て行かないケース。 (4)生活困窮・住み替え先がない 特に高齢者や専業主婦だった元配偶者は、転居先がなく「なし崩し的に居座る」ことがある。
3. 不法占有の法的性質 💡(1)法律上の根拠なし 離婚が成立し、財産分与や使用貸借の合意がない場合、 元配偶者の占有は「不法占有」になります。 💡(2)不法行為に該当 民法709条(不法行為)により、 不法占有者は損害賠償(立退料相当額や使用料)を請求される可能性があります。 💡(3)使用貸借契約が成立しているケースも 一方で、離婚時に「しばらく住んでいいよ」と了承した場合、 黙示の使用貸借契約が成立していると見なされる可能性もあり、 即時の退去請求が難しくなる場合があります。
4. 所有関係別の対応ポイント (1)単独名義(夫または妻) ➡️ 所有者の意思だけで退去請求可能。 内容証明郵便で退去を要求 応じなければ民事訴訟(明渡請求訴訟)へ 判決後、強制執行による立退きも可能 ただし、実際には感情的対立が激しいため、 弁護士・司法書士を通じた書面交渉が必須。 (2)共有名義(夫婦持分あり) ➡️ 一方が他方の居住を排除できない。 共有者の一人が住み続けること自体は不法ではないため、 居住をやめさせたい場合は、 共有物分割請求訴訟(売却・分筆・代償分割) 協議による持分買取 などを行う必要があります。 この場合、法的には「不法占有」よりも「共有物利用権の濫用」に近い扱いになります。
5. 実務対応の流れ ステップ①:所有権の確認 登記簿謄本を取得し、誰の名義か・共有割合を確認。 ステップ②:内容証明で退去要求 法的根拠(離婚成立日、使用権なし等)を明記して送付。 文面には「〇月〇日までに退去されない場合、法的手段を取ります」と明記する。 ステップ③:訴訟・強制執行 応じない場合は、 明渡請求訴訟を提起し、 判決後、執行官による立退きが実行される。 ※ただし、子どもが未成年で同居している場合などは、家庭裁判所が介入する可能性もあります。
6. 不法占有中の損害賠償・使用料 💴 使用料相当損害金 不法占有期間中、 その不動産を第三者に貸して得られる賃料相当額を損害金として請求可能。 例: 家賃相場10万円/月 × 12か月 = 120万円 → これを損害賠償請求(不当利得返還請求)として訴えることができる。 💥 原状回復義務 不法占有者は退去時に、 敷地の破損修理 家具・荷物の撤去 鍵の返還 などを行う義務があります。
7. トラブルの実例 ケース:元妻が自宅に居座り続けた例 夫名義の自宅に元妻が離婚後も3年間居住。 夫は再婚し新居を構えるが、元妻が家を出ず売却できない状態に。 裁判所は「居住の権限は既に失われている」と判断し、 明渡請求を認める判決を下した。 同時に、居住期間中の使用料相当損害金(月10万円)を支払うよう命じた。
8. 不動産実務の課題 🧩 買主・仲介会社のリスク 不法占有中の物件を売却する場合、 買主が入居できないため契約解除・損害賠償に発展。 媒介契約時には「占有者の有無」を必ず確認。 🧩 家財道具の撤去問題 退去後に元配偶者の荷物が残っている場合、勝手に廃棄するとトラブルになる。 → 一定期間の保管・通知義務を経て処分するのが原則。
9. 解決策まとめ 対応策 内容 補足 内容証明郵便 退去要求の意思を明確化 弁護士名義で行うと効果大 明渡請求訴訟 法的強制力を得る 判決まで6か月前後 強制執行 実際の立退き実施 執行官立会いで実行 共有物分割請求 共有名義の場合に有効 売却・代償分割など 損害賠償請求 不法占有期間の使用料相当額 不当利得返還請求も可
10. まとめ 離婚後に元配偶者が居座るのは、原則「不法占有」 所有権者は退去要求・損害賠償請求が可能 ただし共有名義や黙示の使用貸借がある場合は法的整理が必要 感情的対立を避け、早期に専門家(弁護士・不動産会社)へ相談することが重要
🐼ぱんだhouseコメント 「元配偶者の居座り問題は“感情”と“法”がぶつかる典型例です。 法律上は明渡請求が可能でも、実務上は立退きまで半年~1年かかることも珍しくありません。 相手に悪意があれば、荷物放置や嫌がらせ、鍵の交換など新たなトラブルに発展することも…。 こうしたケースでは、法的手続き+冷静な交渉の両輪が大切です。 私たちは不動産の現場で、弁護士・司法書士と連携しながら、 「立退き後の売却」「再利用計画」までを一体でサポートします。 感情ではなく、仕組みで解決する。それが安心への第一歩です。」