小規模宅地の特例

小規模宅地の特例:相続・贈与で土地評価を大幅圧縮する制度を徹底解説

相続税の節税策として知られる「小規模宅地の特例」は、対象となる土地に対して最大80%の評価減を認める強力な制度です。利用するかどうかで、相続税額は大きく変わります。本コラムでは、制度の概要、対象土地、適用手順、注意点まで徹底的に解説します。

 

1️⃣ 小規模宅地の特例とは? 相続開始前から被相続人が所有していた宅地のうち、一定条件を満たす場合に、相続税評価額を大幅に減額できる制度です。 減額率:最大80% 適用対象:宅地(居住用・事業用・貸付用の一部) 目的:被相続人の生活基盤や事業継続を守ること

 

2️⃣ 対象土地の種類と減額率 土地の種類 減額率 適用条件 居住用宅地(特定居住用宅地等) 80% 相続開始時に被相続人が住んでいた土地で、同居していた親族が相続・使用する場合 事業用宅地(特定事業用宅地等) 80% 被相続人または同居親族が事業を営んでいた土地 貸付事業用宅地 50% 貸付事業として使用されていた土地。ただし限度面積は200㎡ 注意点 一人の相続人が適用できる面積には上限がある 居住用宅地:最大330㎡まで 事業用宅地:最大400㎡まで

 

3️⃣ 適用条件の整理 小規模宅地の特例は、単に土地を相続するだけでは適用できません。条件を満たす必要があります。

① 居住用宅地の場合 相続開始前に被相続人が居住していたこと 相続人が相続または遺贈により取得 相続人が相続後も引き続き居住すること(賃貸では不可) 適用には申告が必要(原則、相続税申告)

② 事業用宅地の場合 被相続人または親族が事業を営んでいた土地 事業継続を目的に相続人が取得 事業を廃止した場合は減額取り消しの可能性

 

4️⃣ 適用の手順(実務フロー) 土地評価額の把握 路線価方式、固定資産税評価額で計算 土地の形状・面積・用途を正確に整理 対象土地の判定 居住用か事業用か 適用上限面積に収まるか 相続税申告書の作成 「小規模宅地等の特例の適用明細書」を添付 申告期限は原則、相続開始から10か月以内 評価減額計算 330㎡までの居住用宅地:評価額 × 20% 400㎡までの事業用宅地:評価額 × 20% 税務署提出と承認 認められれば相続税額は大幅圧縮

 

5️⃣ 実務上の注意点 申告が前提 自動で減額されるわけではなく、申告しなければ特例は使えません。 複数の相続人で争う場合 特例の適用は1つの土地につき1人の相続人のみ適用可能。誰が適用するか合意が必要。 貸付用宅地との併用不可 居住用と事業用宅地の組み合わせには制限がある。 相続後の用途変更リスク 適用後に賃貸や売却すると、将来的に追徴課税される可能性あり。

 

6️⃣ ケース別イメージ ケース 推奨対応 被相続人の自宅(200㎡)を子が相続 最大80%評価減で節税効果大 事業用宅地(500㎡)を相続 上限400㎡のみ減額対象。超過部分は通常評価 貸付用宅地(150㎡) 50%減額。ただし200㎡上限に注意

 

7️⃣ まとめ 小規模宅地の特例は相続税圧縮に非常に有効な制度 適用条件の確認、評価額計算、申告手続きが不可欠 面積上限や複数相続人間の調整など、実務の注意点が多い 事前に専門家とシミュレーションして計画するのが最善

2025年09月18日