持分放棄と贈与の違い

持分放棄と贈与の違い|共有不動産の「持分調整」で最も誤解の多いポイントを徹底解説 共有不動産のご相談で非常に多いのが、 「自分の持分を相手に渡したいのですが、持分放棄と贈与は何が違うの?」 という質問です。 結論からいうと、“税務の扱い” が大きく異なり、実務で重大な差が出ます。 この記事では、 法律的な違い 税務上の扱い 登記の手続き どちらを選ぶべき状況か をがっつり詳しく解説します。

 

■ 1. 持分放棄とは?|不動産の「放棄=誰かにあげる」ではない点に注意 持分放棄とは、 「私はこの不動産の共有者ではありません」と一方的な意思表示で持分を失う行為 を指し、民法上も認められています。 ● 重要ポイント① 持分放棄をすると、その持分は 民法255条により、残りの共有者に法定割合で帰属 します。 つまり、 誰に渡すかは自由に指定できない 残りの共有者全員に自動で按分される というのが大きな特徴です。 ● 重要ポイント②:税務上は「贈与とみなされる」 持分放棄は“無償で持分を失う”ため、 税務上は 他の共有者への贈与と同じ扱い になります。 つまり、 ✔ 他の共有者に贈与税の課税対象 になる点は避けられません。

 

■ 2. 贈与とは?|渡す相手を指定できるが贈与税の対象 贈与とは、 自分の持分を特定の相手に意図して無償で渡す行為 です。 贈与契約書が前提となり、 渡す相手を自由に指定できる 贈与税が発生する という点が持分放棄と異なります。 ● 典型的な贈与パターン 親の持分を子へ移す 兄の持分を弟へ移す 離婚に伴い片方が持分を譲渡する(※離婚の場合は財産分与で非課税になる場合あり)

 

■ 3. 登記の違い|実務フローに大きな差が出る ● 持分放棄の登記 「持分放棄による持分移転登記」 を行います。 登記原因:持分放棄 持分は残りの共有者へ自動的に移転 各共有者は法定持分で増加 誰か1人へ集中させたい場合は不向き ● 贈与の登記 「贈与による持分移転登記」 を行います。 登記原因:贈与 受贈者を1人にすることも可能 任意の割合で持分を移すことができる

 

■ 4. 税務の違い|ここが最大の分岐点 ● 持分放棄 → 他の共有者に贈与税が課税 持分放棄は無償行為なので、 残る共有者が 持分の価値を無償で増やした と評価されます。 そのため税務上は、 ✔ 共有者が受贈者となり贈与税が発生 持分を自動で按分される仕組みのため、 複数の共有者がいる場合は全員に課税が及ぶ可能性があります。 ● 贈与 → 受け取った人に贈与税が課税 贈与の場合は、 受け取った相手が贈与税の対象となります。 ただし、次のような特例で非課税になるケースもあります。 ● 贈与税がかからない主な例 離婚時の財産分与(適正範囲内) 相続時精算課税を使う場合 110万円の基礎控除の範囲内 税務計画が立てやすいのは贈与のほうです。

 

■ 5. 実務でどちらを選ぶべき?|ぱんだhouseの現場アドバイス 結論: ✔ 明確に相手を指定したい → 贈与がベスト ✔ 共有者が1人しかいない → 持分放棄も選択肢 (例:自分以外の共有者1名のみ) ● 持分放棄が不向きなケース 共有者が複数いる 特定の1人にまとめたい 贈与税を減らしたい(持分放棄は回避不可) 現場では、 持分放棄が原因で想定外の贈与税が発生し、後から大きなトラブルになる ケースを何件も見てきました。 慎重に選択するべき項目です。

 

■ 6. まとめ|持分放棄は“贈与扱い”、贈与は“相手を決められる”

2025年12月13日