限定承認ケーススタディ|具体例でわかる限定承認の流れと注意点 相続で「財産より借金が多いかもしれない」「親の事業の負債がわからない」… そんなときに選択肢となるのが 限定承認(民法922条) です。 ただし、限定承認は手続きが複雑で、メリットだけでなくデメリットも明確。 そこで今回は、実例形式(ケーススタディ) で具体的にわかりやすく解説します。
■ ケーススタディ①:親の自営業の負債が不明なケース
● 状況 父が急逝。 ・自宅不動産(評価1,800万円) ・預貯金(200万円) ・事業の借入がどれだけあるか不明 ・相続人は妻と子2人の計3名 “負債がどれだけあるかわからない”典型的なケース。
● 判断:限定承認を選択 3人の相続人全員が協議し、家庭裁判所で限定承認を申述。 ● 手続きの流れ 相続開始から 3ヶ月以内 に限定承認を申述 限定承認者=相続財産管理人となり、財産目録を作成 官報公告 → 債権者へ通知 債務の確定 財産を売却して返済 残った財産があれば相続人に分配
● 結果 ・事業の借金:1,100万円 ・自宅を売却(2,000万円で成約/ぱんだhouseのケース) ・清算後、家族3名に約100万円ずつ残る もし単純承認していたら、家族が1,100万円の借金を背負うリスクがあった案件。
■ ケーススタディ②:不動産が負債より多いケース
● 状況 母が死亡。 ・マンション(2,800万円) ・預金100万円 ・クレジットカード借入200万円 ・税金滞納100万円 借金はあるが、財産のほうが多いパターン。
● 判断:限定承認+不動産売却を選択 負債は確定しているが、 限定承認をすれば税務上の特例(みなし譲渡課税の軽減) が受けられる可能性があるケース。
● 手続きと結果 ・マンションを売却→2,700万円 ・負債300万円を返済 ・最終的に子ども2名に 約1,200万円ずつ が残る 特にマンション価格の下落が心配だったため、 限定承認で財産の処分プロセスを明確化 できたことがメリット。
■ ケーススタディ③:不動産が共有名義で処理が難航するケース
● 状況 父の遺産の一部に、兄弟3名の共有名義になっている古家あり。 固定資産税は安いが、再建築不可・雨漏りあり。
● 問題点 ・単純承認すれば修繕費や解体費の負担が相続人に ・相続放棄すると共有名義なので持分が国に帰属 → 売却がさらに困難 → 限定承認が最適解
● 結果 限定承認後、古家は100万円で買い取り手が見つかり、 解体費を負担せずに済む結果に。
■ 限定承認が向いているケースのまとめ ✔ 負債が不明 ✔ 自営業・個人事業主の相続 ✔ 不動産が多い(換金しやすい) ✔ 共有名義の不動産がある ✔ 財産より負債が多い“可能性”がある 特に不動産がからむ相続は、 限定承認+相続不動産の査定がセット で成功確率が大きく変わります。 ぱんだhouseでは、限定承認で必要となる 「相続財産の時価査定」「再建築不可や古屋の処分相談」 にも対応しています。