贈与登記|ケーススタディで理解する贈与リスクと最適解 不動産の贈与は、親子・夫婦・親族間でよく行われる手法です。 しかし、 「名義を変えるだけなら簡単」 という誤解から、後で大きなトラブルに発展するケースが少なくありません。 今回は、ぱんだhouseが現場で遭遇してきた実例をもとに、 贈与登記の落とし穴と成功するためのポイント をケーススタディ形式で詳しく解説します。
■ ケーススタディ①:親が娘へ「自宅」を贈与 → 700万円の贈与税トラブル ●【背景】 父(75歳)が娘に実家を生前贈与 将来の相続トラブルを避けたいという意図 税金についての知識はなく、 不動産会社から「登記だけすればOK」と言われ実行 ● 起きた問題 実家の評価額(固定資産税評価)…2,200万円 贈与税の基礎控除…110万円 → 課税対象額:2,090万円 → 贈与税:約700万円 父娘とも「え?こんなに税金が?」と大混乱。 さらに… 贈与税を払えず、結局ローンを組むことに 父は「節税のつもりが負担増」と後悔 娘も「登記を急ぎすぎた」と落胆 ● 解決策 実は、このケースなら 相続時精算課税(2,500万円まで非課税)」を使えば税負担ゼロだったケース。 しかし登記後に申請期限を過ぎてしまい、適用不可。 ✔ 贈与前の「税務チェック」の重要性が露呈した代表例 ✔ 登記は簡単でも税のリスクは桁違いに大きい
■ ケーススタディ②:夫が妻に自宅を贈与 → 住宅ローンの落とし穴 ●【背景】 夫婦共有名義のマイホーム 離婚ではなく、家計上の理由から「妻100%名義へ変更したい」 夫が「持分を妻に贈与すればいい」と考えて登記を依頼 ● 起きた問題 マンションの住宅ローンは夫が単独で契約 しかし妻へ贈与すると、 金融機関の承諾なく名義変更した=契約違反(期限の利益喪失) 最悪、ローン一括返済を求められる可能性まで発生 さらに… 贈与税(持分50%相当)も発生 名義変更したことで、夫婦の返済計画が崩れる恐れあり ● 解決策 銀行と交渉し、 妻単独で借換え → 夫のローン解除 → 贈与登記 税務署と事前相談し、 「夫婦間の居住用不動産の贈与(2,000万円控除)」を活用 ✔ ローンが絡む贈与は必ず“銀行承認”が必要 ✔ 税務特例を使えば贈与税をゼロにできる
■ ケーススタディ③:相続争い回避のため贈与 → 他の兄弟が「不公平だ」と揉めた ●【背景】 父(90歳)が長男と二男に自宅を相続させたい 節税と将来の争い回避のため、生前贈与を検討 しかし三男(疎遠)がいるため、静かに贈与を実行した ● 起きた問題 三男が後で知り、「自分だけ除外された」と不満に 父は意思能力が弱っており、 「無効な贈与だ」と主張され法的トラブルへ発展 家族関係が完全に破綻 ● 解決策 贈与は中止し、 遺言書で「長男と二男に相続させる」と明記 遺留分対策として「生命保険で三男に一定額を確保」 法務・税務・家族調整の専門家が入り再構築 ✔ 贈与は家族関係への影響が大きい ✔ 遺言+贈与+保険を組み合わせることで公平感を担保
■ 贈与登記に潜む“見落としがちなリスク” 1. 贈与税が想像以上に高額 110万円控除だけでは不動産贈与はほぼ課税。 2. 税務特例の適用漏れ(よくある) 相続時精算課税 配偶者控除2,000万円 小規模宅地特例(相続との組合せ) 3. 住宅ローンの契約違反になることがある 4. 名義変更後の権利トラブル 親族間の不公平感が高まり、相続争いへ発展しやすい。 5. やり直しが効かない(登記は取り消し困難)
■ 贈与登記を成功させるポイント ●① 税金を先にシミュレーションする 贈与税・不動産取得税・登録免許税・固定資産税の変化まで確認。 ●② 銀行借入がある場合は「まず銀行へ相談」 勝手な名義変更は危険。 ●③ 家族の理解・同意を得る 特に兄弟がいる場合は将来の相続トラブルを防ぐ。 ●④ 可能なら「贈与より遺言」のほうが安全な場合も 登記リスクがなく、制度として安定。 ●⑤ 専門家の三者連携 司法書士+税理士+不動産の視点で判断するのが確実。